by yamada-07
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少年誌盛衰

「昔はよかったね」とはいつの時代も言われる台詞ですが、今のジャンプに関しては確かにその通りではないかと思います。

巷でもよく言われることですが、昔のジャンプは掲載されている漫画に幅がありました。
私が本誌を読んでいた頃はいわゆるジャンプ黄金期で、「ドラゴンボール」、「スラムダンク」、「幽々白書」らが三本柱として屋台骨を支えていました。発行部数が600万部を越えたことの主要因はこの三作品だといっても過言ではないでしょう。

ですが、その脇を固めていた佳作たちの存在を忘れてはいけません。メインターゲットである子供たちのハートは確かにその三作品ががっちりキャッチしていましたが、当時はスーツを着ているいい歳した大人もジャンプを読んでいたものです。個人的には、いい大人が公共性の高い場所で漫画を読むのはいかがなことかと思っているクチですが、それはともかくとしても、老若男女を問わずにジャンプが読まれていたのは、三作品の力のみではないと思います。

Wikiを見れば当時の連載作品が載っていますが(1990年代前半連載開始作品)、「花の慶次 ―雲のかなたに―」、「瑪羅門の家族」、「ボンボン坂高校演劇部」(ちなみに私は、「部活物の漫画といえば?」という問いにまず思いついたのが「ボン坂」だった人間です)、「究極!!変態仮面」、「モンモンモン」、「珍遊記 -太郎と愉快な仲間たち-」、「こもれ陽の下で…」、「D・N・A² 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜」、「王様はロバ〜はったり帝国の逆襲〜」、さらにはその前からの連載である「ジョジョの奇妙な冒険」、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」など、男女はともかく老若に関しては幅広く受け入れられるような連載陣が揃っていたのです。

原哲夫先生や宮下あきらせんせいなどの劇画タッチがジャンプで連載していたなんて、平成生まれの人間にはにわかに信じがたいことかと思います。
そう、今の連載陣はかつてに比べて絵やストーリーの傾向がかなり似通っていると思うんですよ。
ざっくり言えば、どれもこれも非常に「かわいい」絵ですよね。より具体的に言えば、どの漫画のキャラもみな眼が大きいんです。

眼の大きさは、端的にかわいらしさの象徴です。少女漫画を見ればそれは一目瞭然で、「かわいいが正義」が錦の御旗として翩翻と翻っている「ちゃお」などは、もはや顔の半分が眼という畸形種が表紙を飾っていたりします。
かわいさを求める風潮が少年(男性)誌の領域にまで流入してきた結果、キャラの眼の巨大化です。

かわいさを求める、と書きましたが、それはとりもなおさず、内容以上にキャラの容姿に主眼が置かれるようになったということを意味します。それを今風の言葉で言えば、「萌え」ってことですが、その中身とは、(ポストモダンを気取りたがる人の言葉で言えば)キャラの効率的な消費です。とっつきやすいものをとっつきやすく作ってとっつきやすいままに市場に出し、それが飽きられる前に次なるとっつきやすいものをまた出す。その循環が「萌え」産業の構造であり、マクロな視点で持ってみれば、資本主義、グローバリズムの一つの必然なのです。

そのような漫画でジャンプが埋め尽くされているからといって、そうでない漫画が漫画界から駆逐されたかといえばそうではありません。ヤングジャンプ、ビジネスジャンプ、スーパージャンプなどのより年齢層の高い雑誌に、非「萌え」漫画は移っていったのです。
その最たる例が、少年ジャンプで連載していながらも現在はスーパージャンプで連載している荒木先生でしょう。かつてのテイストでは現在のジャンプの毛色とは余りにもかけ離れ、本人の希望か編集部の意向かはわかりませんが、めでたく移籍しての連載となりました。

それと真逆であるのが「こち亀」でしょう。ま、すでに30年を越える超長期連載ですから、途中でいくらかの路線変更があるのはある種の必然ではありますが、「こち亀」は時代時代の流行(メイン、サブを問わず)を貪欲に取り入れその存在を保っています。現在の「こち亀」も、今のジャンプの風潮を受け入れ、それに沿った絵柄、ストーリー展開になっています。これは融通無碍というべきか、プリンシプルの欠如というべきか判断に迷うところではありますが、プロの姿ではあります(個人的には50~80巻あたりが一番好きなんですけどね。絵の書き込みと、話のはちゃめちゃさと、人情話のバランスには、今読んでも腹を抱えながらもほろりとさせられます)。

雑誌が目指す読者層のために、あるものは出て行き、あるものは残り、作家の取捨選択を経て作られているのが今のジャンプです。かつてのジャンプにはあった掲載漫画のグラデーションは今では殆どなくなってしまいました。その差は、日本の虹とシベリアのある部族のそれとの差どころではないでしょう。

ただでさえ少子化云々言われているところで、読者層を絞れば発行部数が落ちるのは必然です。
かつての黄金期からの凋落は、相次いで連載を終了した「ドラゴンボール」と「スラムダンク」に因るところが大きいようですが、なんとかその歯止めをかけようとした編集部の思惑は、それ以降の連載開始作品、デビュー作家の顔ぶれを見ればなんとなくつかめます。明らかにその絵柄は、現在の状況に通じる「かわいい」ものばかりで(「ワンピース」、「封神演義」、「HUNTER×HUNTER」などが看板作品となって、それ以外のギャグメインや、かわいげに欠ける絵柄の作品は長期連載になることなく連載を終えています)、森田まさのり先生の「ROOKIES」がほぼ唯一の例外といっていいでしょう。
つまり、三本柱の終了で離れていった(と編集部が考えた)子供(誤解を恐れずに言えば、女子供)をなんとか連れ戻そうという考えの下で、当時の連載開始作品は方向性が付けられ、連載中の作品でさえテコ入れの憂き目に遭ったりしています。そして、それが激化したために、掲載作品は一様に「かわいい」絵柄になってしまったのです。二匹目の泥鰌を追いすぎた編集部の勇み足、といったところでしょうか。

ジャンプに限らず、少年誌はどこも「かわいい」絵柄の漫画に埋め尽くされかけています(例外として、勇猛果敢なチャンピオンがいますが)。それは結局は、縮小し続けているマーケット内で顧客の獲得に躍起になっているという状況になってしまっています。
厳密なゼロサムゲームではないので、顧客の重複は十分にありえる話ですが、それはどちらかといえば経済力に余裕のある大人にこそ言えるものです。各誌とも、発行部数の増加を目論むなら、掲載漫画の年齢層の幅の拡張をすべきではないでしょうか。


世の中が みんな黄色というのなら あほうになって 白を買うべし


最後の相場師・是川銀蔵の名言で以って、論の結びとしたいと思います。






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by yamada-07 | 2008-07-17 20:49 | 雑記