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by yamada-07
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ラジオ、本の面白さ

メディアの発展が著しい昨今。街頭テレビに人垣ができていたかつてとは隔世の感があります。
いや、当時存命だったわけではないですけど。

情報を流通させる物質的な媒介のさきがけは、15世紀あたりのグーテンベルクの活版印刷まで遡りますかね。彼の発明により、同時に、大量に印刷物を作れるようになり、それが聖書の普及を促したという歴史背景があります。
物質的なメディアの第一歩は新聞(文字のみ)ということでしょうか。
そこから、カメラ・オブスキュラから始まる映像投影技術、モースからなる電信技術など、距離的、質的ともに、メディアは発展を遂げてきました。
さらにはそれらが複合された、写真付新聞、ファックス、テレビ電話、インターネットなど、情報の伝達技術は日進月歩の勢いで成長しています。


単純に情報を伝えるだけならば、(基本的に)文字だけのメディアである新聞や、音だけのメディアであるラジオより、それらの複合体であるテレビの方が、メディアとしての利用価値は高いはずです。
しかし、それにも関わらず、相変わらず皆新聞をとっているし、ラジオが消えてなくなるという話も寡聞にして知りません。各世帯のテレビ普及率がほぼ100%の近いであろう現在日本、新聞、ラジオ、あるいは本などの単一メディアは姿を消してもいいはずです。
何ゆえに、これらの比較的不自由なメディアはいまだに存続し続けているのでしょうか。


その答えは、これらメディアの、正に不自由さにあると思います。
文字だけのメディアである本(特に小説などの類)、音だけのメディアであるラジオ。これらのメディアから得られる情報は、文字という視覚情報だけであり、音声という聴覚情報だけです。
それゆえに、ここから得られた不完全な情報を、情報の受信者である読者、リスナーは自分なりに構成しなおさなければいけません。
文章から読み取れる情景を脳裏に描き出し、耳から聴こえてきた声からパーソナリティの表情を想像し、そこに受信者固有の世界を生み出すのです。
そして、この「個々に異なる固有の世界の創造」という過程こそ、単一メディアの真骨頂であるといえましょう。
その世界は、受信者の状況、考え方、気分などで姿かたちを変えていきます。気分の高揚したときに聴くラジオドラマと落ち込んだときに聴くそれとでは、瞼の裏に浮かぶ情景は違うだろうし、数年前に読んだ小説を改めて読み返してみたら、また別の面白さがあった、というのは身に覚えのある話だと思います。

逆に、テレビのような映像と音声のハイブリッドメディアでは、そのような想像(創造)性が介入する余地が極端に少なくなってしまいます。良くも悪くも、提供される情報が具体的なのです。
昨今は、娯楽番組でテロップが流されることが非常に増えていますが、それも情報により具体性を増している一例だと思います。要するに、「ここが笑いどころ」というのを発信者サイドが具体的に決めてかかって情報を送り出しているのですから。

もちろんハイブリッドメディアの利点として、情報が速やかに伝達されうる、というものがあります。
視覚聴覚両方から同時に情報を得られるのですから、単純に単一メディアの倍の情報量を同じ時間で受信できることになります。
それゆえに、ニュースなど、具体的かつ可及的速やかに発信する必要のある情報にとっては非常に有用なメディアであるといえます。


依然生き残っているとはいえ、単一メディアが下火になっている理由に、発信者側の技量がハイブリッドのそれよりも高く求められるということがあげられると思います。
単一メディアは、受信者側に想像の余地が残されているということは、それは裏を返すと、想像するだけの材料がなければなにも世界が広がらない、ということになってしまいます。
十分な量の情報を的確に正確に発信する。
簡単なようでいて非常に難しいこの技能を所有するひとは、技術の発展、利便性の増加と引き換えに、確実に減ってしまったことでしょう。
視覚聴覚の同時発信は、発信できる情報が非常に多いため、逆に受信者側の解釈技術に依存するところが少なからずあります。言ってしまえば、発信すれば受信者任せでいいのです。

このようなプロ的な技能をもつ職人の減少と共に、単一メディアは減衰していったという背景もあることでしょう。


しかし、いまだに残っているそんなプロたちの仕事に敬意を払いつつ、本を読みラジオを聴き、有意義な娯楽として楽しみたいと思います。


なんか論文みたいになっちゃいましたね。
なにが言いたいかといえば、「伊集院光は面白い」と「『エンタの神様』はさっさと終わってほしい」の二点に集約できそうです。
by yamada-07 | 2005-07-25 01:24 | 雑記